令和6年度埼玉県公立高校入試。
第4回目は理科の振り返りです。
今回、全ての教科の中で一番難しかったのは、おそらく理科でしょう。
単なる知識を問う問題も無くなったわけではないですが、
細かいところまでしっかりと覚えてないと解けないという、
手強い問題が多い。
それよりも目立ったのは、「知識を使って考えさせる問題」が多かったこと。
きっと戸惑った受験生も多かったと思います。
ただ知識を詰め込んだだけでは意味が無く、
その知識を使って物事を考えることが求められているんだよ、
という作問者からの強いメッセージを感じます。
この変化は「喜ばしい変化」ととらえるべきでしょう。
では、前置きが長くなりましたが、
大問1の小問集合から簡単に見ていきます。
問1は、石灰岩とチャートの共通点と相違点が分かってればOK。
問2は、管Xが茎の部分では内側にあることを見抜く。
問3は、こういう細かいところもちゃんと覚えておこうね、ということ。
問4は、光の屈折のちょっとした応用。
問5から問8は、基本用語のみを問う問題。ただし、当たり前だけど、
その用語がどういう意味なのかをちゃんと覚えておかないと答えを出せません。
全て記述形式だからね。
次の大問2は、天体の範囲から。
天体の中でも「月の見え方」に関する問題なのだけど、
必要な知識はそれほど高レベルではないです。
用語で言うと、衛星、月食、日食(皆既と金環)、ぐらい。
それよりも、
「問題文が言っている意味を正しく理解する「言語理解力」」が
勝負を決める問題でした。
問4なんて、理科の知識は全く必要なく、単なる数学の文章題だからね。
大問3は、動物の分類について。
問1の「ルーペの使い方」は、果たしてどれだけの人が正しく答えられたでしょうか。
顕微鏡の使い方はド定番だけど、ルーペまではマークしてなかった人も少なくないはず。
問2~問4は、基本の用語と、「問題文の内容を元に考えること」が出来れば、
全く恐れずに足らず。
問5の「カモノハシを哺乳類に含めるための分類条件」を答えさせる問題は、
まるで事件のトリックを解き明かすような問題で面白かったです。
大問4は、定番の「炭酸水素ナトリウムの反応」の問題だけど、
なかなか一筋縄ではいかなかったのが今年の問題。
けれど、ここでも、しっかりと文章が読めて、
それを元にしながら考えていくことができれば、
難問に分類される問題はありません。
特徴的なのは問4で、
炭酸ナトリウムが炭酸水素ナトリウムに化学変化する時のヒントが、
全て問題の文章中に書かれてます。
つまり、この化学反応式を覚えておく必要は全く無く、
問題文からそれを導き出すことができるか、
が試される問題だったということ。
最後の大問5は、斜面を移動する物体の運動について。
中3でやった物理範囲ね。
この問題も、必要な知識はさほど多くなく、
「ちゃんと考えられたかどうか」が試される問題。
問3なんて、物理の知識は全く不要。
知識というより「知恵」に近い感じ。
もちろん、この分野の知識が下支えとして無いといけないけど、
それは本当に、基本中の基本の知識だからね。
以上が、今年の理科の、感想を交えた分析です。
あと、今年の問題でとても印象的だったのが、
どの問題も、「○○について、探究的に学習しました」となってること。
今流行りの「探究学習」。
文科省が推し進めようとしている「探究学習」。
ちなみに探究学習とは、
「生徒が自ら問題・課題を設定し、
その問題・課題を解決するために情報収集や情報分析を行い、
周りと意見交換したり協働したりしながら進める学習活動」のこと。
つまり、「自分の頭を使って考えなさい」ということ。
探究学習の良し悪しはさておき、
貯めた知識を使って、考えて答えを出す。
これがこれからは重要なんだよ、というメッセージが
強く伝わってくる今回の理科の問題でした。
「理科は暗記教科」という時代は、終わりました。